生命保険で資産運用してお金を増やす?保険をどう活用するか

生命保険の資産運用/保険で資産形成

生命保険は、商品の性質として「保障性」と「貯蓄性」の2つの側面があります。

本来は「保障性」がメインの特性なのですが、仕組みが複雑になり、種類も多種多様となり、今では投資型保険といわれるような商品もあります。「貯蓄性」の特性が強く打ち出されるようにもなっています。

生命保険も資産運用の種類の一つともいえます。生命保険は資産形成のための金融商品と捉えることもできるのです。

ただ…ぶっちゃけ保険ってややこしくないですか?
自分は保険のことをちゃんと理解するのにけっこう時間がかかりました。笑

なので、今回は生命保険の基本を嚙み砕いて説明し、その種類や仕組み、資産運用としてどう活用できるのかをわかりやすく解説したいと思います。

 

生命保険とは?まずは基本をわかりやすく

生命保険を中学生にもわかりやすく説明

生命保険を中学生でもわかるように説明していきます。
友だち10人が集まって、一人10万円を出します。そうすると合計100万円が集まります。この10人の中で、最初に死んだ人間の家族に100万円全額を渡すと決めます。

この場合、残りの9人は10万円が丸々損してしまいますが、10万円のお金を出した時点では誰が最初に死ぬかは不明ですから、確率は平等です。言ってしまうと、これが保険の原型です。

この条件の場合、リスクは何もありません。100万円を保管しておいて、誰かが死んだらそれを支払うだけなので、外的要因で支払金額(=保険金額)が変化する可能性がないからです。

皆さんは生命保険の価格を把握していない?!

生命保険にも服や靴、TVゲームと同じように商品単価があるのですが、価格が高いことで分割払いが一般的になっており、月々の保険料しか把握していない人がほとんどです。毎月いくら払ってるかだけ把握しているということです。

仮に、死亡時に1000万円が支払われる10年期間の定期保険の保険料が、一括払いで100万円だとします。この一括払いの保険料が生命保険の商品単価です。これを10年間の月払いにすると、月々の保険料が1万円になったりして、保険料の支払額が毎年12万円(1万円×12ヶ月)、10年間で120万円(12万円×10年)となり、一括払いよりも支払額が20万円高くなります。これは割賦やローンと同じ考えなので、分割すると金利分が乗っかって高くなるというのは理解できると思います。

なのですが、生命保険では分割払いが当たり前になっている理由があります。それは通常、その方が有利だからです。

例えば先程の例で、単価100万円で1000万円の死亡保障が付く生命保険を購入したとします。この人がその翌月に死亡すれば、もちろん指定した遺族に1000万円の保険金が支払われます。一方、同じ人が月1万円の分割払いでこの保険に加入して、1ヶ月以内に死亡したとしても、同様に1000万円の保険金が支払われます。

冷静に考えるとちょっと不思議な話ですよね。
この人は10年間で120万円の保険料を支払うはずですから、死亡した時点では商品単価の120分の1の代金しか支払っていません。ところが、それまでに支払った保険料の額に関わらず、死亡すれば満額の保険金が支払われます。死んだら経済的に得するということです。

この仕組みこそ、保険商品が銀行預金や投資信託等の他の金融商品と大きく異なる「保障性」と呼ばれるものです。

ところが、一部の保険商品には「貯蓄性」という要素もあります。貯蓄性のある貯蓄型保険の場合、分割払いの保険料は銀行の積立預金と同様となり、未来の満期日になれば、積み立てた保険料に利息を乗っけて返してもらうことができます。

「保障性」オンリーの生命保険の場合、保険料は掛け捨てになりますから、保険期間が終わってお金が戻ってくるということはありません。

生命保険の場合、本来の機能である「保障性」に加えて「貯蓄性」がセットオンされた商品が主流になっているため、保険加入者自身も混乱する原因となっています。

生命保険の代表的な種類である定期保険は保障性を買うもので、貯蓄性は基本的にないです(損害保険や医療保険も同様)。一方で、養老保険は保障性よりも貯蓄性をメインにした貯蓄型商品です。終身保険は保障性も貯蓄性もあるハイブリッドタイプで、一般的に保険会社の人がおすすめしてくるのは終身保険になります。

 

生命保険の仕組みはどうなっている?

生命保険で利益が出る仕組み

当然ですが、保険金がもらえるのは、保険加入者の中で最初に死んだ人だけではなく、何番目に死んだ人でも、規定の保険金が支払われることになります。当たり前ですが、死亡者(保険金の受取人)が増えれば増えるほど、保険金の支払いが増えて、保険会社の利益が無くなります。

これが保険に特有の「確率のリスク」です。一方で、リスクがあるということはリターンもあって、死亡者が予定よりも少なければ、保険会社は利益が出ることになります。

保険加入者が一定程度増えることに加えて、死亡率(疾病率や損害率)の過去データが溜まっていけば、支払わなければならない保険金額が精度高く予測できます。

このように対象が増えれば「確率のリスク」を精度高く予測できることを『大数の法則』といいます。全ての保険商品は、この『大数の法則』をベースに商品設計がされています

予定利率と生命保険料の仕組み

10万円を貯金して、20年後に20万円にするためには、利率3.5%程度になります。であれば、平均生存期間が20年の人たちから10万円の掛金を集めて、死亡時に20万円を支払う保険の場合は、預かった掛金を3.5%以上で運用すれば良いことになります。

この利率のことを「予定利率」といいます。「予定利率」は契約者との約束を果たすために義務付けられた利率なので、まぁ定期預金の金利みたいなものです。

定期預金の場合は、金利が高いと満期時の受取金額が多くなりますが、保険の場合は、受取金額である保険金は予め決まっているので、予定利率が高いと生命保険料が安くなります。反面、予定利率が低いと生命保険料が高くなります。

生命保険料は、予定利率と予定死亡率(=事故率)によって決定されます(ここに経費率=コストも加味されます)。掛け捨て型の定期保険(予め保険の有効期間を10年とか15年とか決めておいて、その期間内に死亡したり、事故にあったり、病気になったときだけ保険金が支払われる種類の保険)の場合は、運用要素は少ないので、基本的に予定死亡率(=事故率)と経費率によって保険料が決定します。

予定利率は保険の「貯蓄性」に、予定死亡率(=事故率)は「保障性」に関わる部分で、この2つが組み合わされることで保険商品が複雑化しています。

終身保険で保険金はいくらもらえるのか

生命保険には、定期保険の他に、終身保険という種類のものがあります。これは保障が死ぬまで続いて(終身)、死んだ時点で一定額の保険金が支払われるという保険商品です。不老不死の人はいないので、最終的には全ての保険加入者が保険金を受け取ることになります。

この終身保険の仕組みを説明します。
例えば、10人から10万円ずつ預かり、倍の20万円にして20年後に返すとします。年利5%で10万円を運用すれば、20年で26.5万円になるので、利率5%の20年もの債券を購入し、20年後の償還時に出資者に20万円ずつ分配すれば、差額が利益になります。もちろん5%よりもっと高い運用利回りを出せれば、利益はもっと大きくなります。

この場合は20万円を受け取るのが20年後になっていましたが、そこをちょっと変更して、死亡したらいつでも20万円受け取れるようにします。そうすると、出資者が20年以上生きれば利益が出ますが、出資者が20年以内に死んでしまうと損失が出ます。ここでも「確率のリスク」が発生します。これが終身保険の基本的な仕組みです。

出資者が死亡するまでの平均期間が20年を超えていれば、全員に20万円を支払ったとしても損はしません。要は、ある人においては損失が出ていても、ある人においては利益が出ており、トータルで利益が出るなら問題ないということです。

生命保険における配当とは?

保険商品というのは、安全性を重視するので、予想される保険金支払額に対して常に多めの保険料を徴収することになります。加入者から余分に保険料を徴収する結果、保険会社には利益が蓄積されていきます。

この利益を保険会社の自己利益にしてしまうと、加入者にマイナスとなるので、余分な利益は何かしらの形で加入者に還元しなければなりません。それが「配当」になります。年2回、保険会社の決算時に加入者への配当額が決まり、通知されます。

日本の生命保険会社は相互会社の形態が多く、その保険相互会社の場合、保険業法によって利益の80%以上を配当として契約者に還元しなければならないと定められています。ただ、その配当を誰にどのように支払うかは、保険会社の裁量で決めて良いことになっています。
(参考:保険業法

保険会社に利益が出れば配当が支払われる保険を「有配当型」、配当が支払われない代わりに保険料を安くしている保険を「無配当型」といいます。どっちが有利なのは結果論になるので、保険会社の運用成績と配当金額次第になります。

 

生命保険の種類は?保険って多すぎ…

貯蓄型保険の養老保険

生命保険には、定期保険終身保険の他に、養老保険という「貯蓄性」が更に高いものもあります。予め満期日(運用期間)の償還額を決めておく商品なので、もはや定期預金と同じです。が、養老保険は、運用期間中に加入者が死亡した場合には、満期償還金と同じ金額の保険金が支払われます。よって、養老保険は「保険付定期預金」と捉えることができます

養老保険は、保障性の比重が少ない分、年齢による保険料の差があまりないです(事故率が加味されにくい)。主に、予定利率によって生命保険料が決められることになります。

ちなみに、保険の種類と保険料が決まる要因は以下の通りです。

定期保険→事故率(死亡率)
終身保険→予定利率+事故率(死亡率)
養老保険→予定利率

保険金の受け取り方による種類

保険金は、通常、加入者が死亡した場合に、一括で支払われます。この保険金を分割で受け取ることもできます。それが「個人年金」となります。

個人年金は、加入者が死亡していれば遺族に支払われますが、養老保険の満期償還金や終身保険の解約返戻金を分割で受け取る場合は、加入者本人が生きている間に受け取ることになります。

分割で受け取る個人年金の場合、支払われずに保険会社が預かっている保険金に対しては、運用益が加算されます。保険金の支払い時に、一括or分割をチョイスする判断基準は、個人年金の運用利率と、他の金融商品の利回りを比較して、有利な方を選ぶということになります。

この個人年金に確立の法則を当て込めれば「加入者が生きている間はずっと支払われる個人年金」というものも作れます。それが「終身年金」になります。

定額保険と変額保険

保険は、受け取る保険金を定額にするのか、運用成績によって変動するのか(変額)で分類できます。一般的には、定額保険の商品が多いです。

定額保険の場合、予め金利(予定利率)は固定されているので、実際の運用利率が予定利率を上回れば保険会社の利益になり、逆に下回れば保険会社はその差分を補填する必要があります。
基本的に運用成績が下がるケースは金利が低下した局面で、他の金融商品も利回りが下がっているはずなので、高い予定利率で貯蓄性保険に加入した人は、保険会社の損失補填の差分だけ得したことになります。

変額保険の場合、保険金は運用成績によって決定するので、予定利率と運用利率の差によってどこに損得が発生した云々の話ではありません。定額保険が元本保証型の商品、変額保険が元本保証のないファンドのようなものと捉えることができます。
変額保険は、死亡保険金のほか養老保険の満期償還金や終身保険の解約返戻金も運用結果によって変動しますが、リスクがある分だけ、高いリターンを期待することもできます。

確定拠出型年金(iDeCo)とは?

保険金の受取額を運用結果に応じて変動させるのが変額保険なら、運用結果に応じて年金の受取額を変える「変額年金」も可能になります。

この「変額年金」に該当するのが、『確定拠出型年金=日本版401kプラン』です。今では確定拠出型年金は「iDeCo」と言われています。※本家アメリカの「401k」は、この年金が法律の401条k項に規定されていることから命名

日本では、保険料(拠出金)が確定していて、受取額は運用結果次第で未確定なことから、確定拠出型と名づけられました。
(参考:iDeCo公式サイト

生命保険の種類の整理

生命保険は、通常の金融商品と異なる特徴として、確率の要素(ギャンブル性)が加わります。生命保険会社は加入者から預かったお金を運用するので、通常の金融商品と同じように、運用リスクもあります。

このギャンブル性(保障性)と運用リスク(貯蓄性)の組み合わせによって、定期保険(掛け捨て型で保障性大)、養老保険(貯蓄性重視で保障性低い)、終身保険(保障性と貯蓄性がバランス型)という3種類の保険があります。

次に、保険料の支払い方で、一括払い、分割払い、一括と分割の組み合わせという3種類の保険ができます。同様に、保険金の受取り方でも、一括払い、分割払い、一括と分割の組み合わせという3種類の保険ができます。

このうち、保険金を分割で受け取るタイプが「年金型」です。年金の受取りに確率の要素を導入すれば、加入者の生存年数によって年金の受取総額が異なる「終身年金」も作れます。配当や解約返戻金の有無でも、商品設計は変わります。

最後に、支払われる保険金を予め加入者に約束するか、運用結果に応じて決定するのかで、定額保険変額保険の2種類の商品ができます。これが年金になると、定額年金変額年金(確定拠出型年金)になります。

これらの各要素を組み合わせることによって、様々な種類の保険を設計することができます。こうした多様性が、保険が複雑に思わされる要因になっています。

 

生命保険での資産運用はどうか?保険か投資か…

解約返戻金のシミュレーションから検討

生命保険には「解約返戻金」というものがあります。中途解約のための払い戻し規定を定めています。

解約返戻金は保険期間中の死亡率の違いから生まれるもので、保険期間後半の保険料支払いのために積み立てておいたお金と捉えることができます。

「解約返戻金」は、終身保険や養老保険のような貯蓄タイプの保険と、定期保険のような保障重視の保険では、取り扱いが大きく異なります。

終身保険のケースで見てみます。
例えば、1年間に10万円の保険料を30年間積み立て、死亡時の保険金が1000万円という簡略的な終身保険で考えてみます。仮に保険料の半分の50%を中途解約のために積み立てるとし、それを年5%で運用してみます。1年目に解約すれば5万円(10万円×50%)が払い戻され、2年目に解約すれば10万円+運用益が払い戻されます。この場合、5万円を5%で運用すると1年後には5万2500円になるので、2年目の解約返戻金は10万2500円(5万2500円+5万円)になります。

このまま5万円の解約返戻金を年5%で運用すると、5年後に27万6000円になります。この時点での保険料の総支払額は50万円(10万円×5年)なので、ここで解約すれば、返戻率55.2%の27万6000円が戻ってくることになります。

さらに、同じ要領で10年後の解約返戻金を計算すると、62万9000円となります。この時点での保険料の総支払額は100万円(10万円×10年)になるので、返戻率は62.9%となります。同様に20年後の解約返戻金は165万3000円で、総支払額200万円(10万円×20年)なので、返戻率は82.6%となります。

そして、この保険を満期日まで30年間、毎年10万円ずつ支払い続けたとすると、解約返戻金は332万2000円となり、保険料の総支払額300万円(10万円×30年)なので、返戻率は100%を超えて32万2000円の利益が出たことになります。これが、終身保険の「貯蓄性」といわれるものです。

ところで、30年間に300万円を積み立てて、32万2000円の利益をゲットしたということは、実質年利に換算すると、約0.7%になります。加入者はこの終身保険に加入することで、生涯にわたり死亡時に1000万円が支払われる保障を受けながら、同時に0.7%の利率の定期預金に30年間、10万円ずつ積み立てたのと同じ貯蓄ができたことになります。

このシミュレーションを見ると、終身保険を貯蓄として考えるのが大きな誤りであることが分かります。同じ10万円を年5%で積み立てていれば、30年間で660万円(終身保険の解約返戻金の約2倍)になっているからです。

果たして生命保険で資産運用するべきか?!

貯蓄にはない「保障」というサービスを受けている以上、純粋な貯蓄よりも利回りが落ちるのは当たり前のことですが、終身保険の「貯蓄性」ばかりが強調されると、そのことが忘れがちになります。

国内生保の「保険のおばちゃん」も、外資系生保の「大学アメフト出身のゴリマッチョ」も、生命保険の営業マンは「定期保険は掛け捨てで勿体ないから、貯蓄性のある終身保険をオヌヌメします♪」と言っています。もちろん、加入者側が掛け捨て保険を嫌って、生命保険に貯蓄性を求めていることもあると思います。

が、生命保険に中途半端な貯蓄性(昨今の予定利率1%程度の場合、30年間保険料を掛け続けても解約返戻金は保険料の総支払額を超えないです)しかない終身保険よりも、必要な保障性は保険料の安い定期保険で確保して、貯蓄(資産形成)はコストの安い純粋な金融商品で行うという「保障と貯蓄の分離」の方が合理的と言えます。

終身保険を資産運用として捉えるのはミステイクであると言えます。

 

結論的には、自分で投資した方が(生命保険料を運用に回した方が)、利回りが高いならそっちの方が良いです。一方で、自分で投資するのが面倒という考えの人にとっては、仮に利回りが低くなっても、外注化の発想で、保険会社に運用を託して、生命保険で資産運用するのもアリかもしれません。

が、いずれにしても、保険の「保障性」と「貯蓄性」をごっちゃにして考えるのはミステイクで、自分で投資して高い利回りを出せるのであれば、保険には「保障性」だけを求めることが経済合理的といえます。そこは注意すべき点かと思います。

 

次回は、金(ゴールド)への投資でお金を増やす方法について説明します。

生命保険の資産運用/保険で資産形成