昨今の低金利時代を背景にした「投資や資産運用をやるべき」ムーブメントの中で、不動産投資はキャピタルゲインではなくインカムゲイン重視で、「安定的に不労所得をゲットできる」「手堅く資産形成できる」といったイメージを武器に、じわじわと人気を博しています。
ですが、不動産投資は、マンション経営やアパート経営など不動産経営とも言われるように、ビジネス色が強くなりますし、不動産ビジネスはあまりオープンな市場ではない(素人が情報を取りにくい)ので、投資初心者からすると、難しそうなイメージもあると思います。
知識不足の状態で、不動産業者からおすすめされるがままに、ローンを組んで物件購入してしまった…とかにならないように、しっかりと基礎固めをしておきましょう。
今回は、不動産投資に関する知っておきたい基本知識を初心者にもわかりやすく説明します。不動産投資の種類や仕組み、メリット・デメリット、リスク、やり方等を解説しますので、まずは基本を学ぶべく読んでいただければと思います。
不動産投資とは?まずは基本から
不動産投資とは、マンションやアパートなどの不動産を購入し、賃貸することで家賃収入を得たり、購入時と売却時の差額で利益を得たりする投資方法です。
不動産投資では、家賃収入をインカムゲイン、物件の売却益をキャピタルゲインといいます。
株式投資やFXなどの金融商品では、収益源がキャピタルゲインになりやすいですが、不動産投資においては、購入した物件を他人に賃貸して、その間に毎月家賃収入を得る=安定したインカムゲインを得ることが基本の稼ぎ方になります。
不動産投資は、はじめる前に学ぶべき知識が多かったり、不動産という高額なものを購入するための資金が必要となったりします。ですが、収益物件を購入することができて、賃貸をすることができれば(借り手がいれば)、運用のための日常的な労力があまり必要なく(株式投資のようにマーケットを定期的にチェックしなくても良い、管理は専門業者に外注できる等)、不労所得で資産形成することができます。これらを理由に、副収入を安定的に稼ぎたいと思っているサラリーマンなどから人気となっています。
最近では、20代の若いサラリーマンでも、将来を見据えて不動産投資をはじめる人もいます。初心者に向けておすすめの収益物件を紹介するブログや本なども増えているみたいです。
不動産の投資対象は、マンション(ワンルーム)、アパートのほか、戸建て、駐車場など色々な種類がありますが、いずれにしても、一括購入するのは難しいので、ローンを活用することになります。要するに、借金して投資用不動産を買うのです。
基本的に、ある程度の頭金が必要になりますが、職業や年収、物件の収益見込みなどの条件により金融機関からの融資額が変わるので、必要な頭金、ローン金額についてはケースバイケースになります。
不動産投資の種類は?どんな投資方法があるの?
不動産投資では、投資対象物件によって様々な種類があり、物件運用のやり方についても色々な投資方法があります。
不動産投資の代表的な種類は、主に以下に分類されます。
- ワンルーム投資
- 一棟投資
- 戸建て投資
- 駐車場投資
- 民泊投資
- REIT(不動産投資信託)
ワンルーム投資
ワンルーム投資は、区分マンション投資ともいわれます。マンションの中の部屋単位で購入・所有して、投資を行うものです。アパートでは部屋単位で購入できることがあまりないので、ワンルーム投資イコール区分マンション投資となります。
マンション・アパートの一棟投資や戸建て投資と比較して初期費用が抑えられることや物件数の多さなどから初心者向きの不動産投資です。
一棟投資
マンションやアパートを一棟まるごと購入・所有して投資を行うものです。一棟マンション投資や一棟アパート投資ともいわれます。
一棟といっても、小さめのアパートから高級マンションまで幅広いのですが、ワンルーム投資と比較するとやはり初期費用が多く必要となり、その分リスクも上がることになります。不動産経営の色が強くなります。
戸建て投資
戸建て投資は、戸建て住宅を購入・所有して、投資を行うものです。
戸建て住宅は、木造部分も多く建物の老朽化が進みやすいことに加え、流動性が低い(売却しにくい)のですが、不動産の価値上昇の土地神話などから根強い需要が未だあるみたいです。パターンとしては、親世代から相続した家を売らずに、運用(リフォームして賃貸)するケースが多いかと思います。
駐車場投資
所有または購入した土地を駐車スペースにして、利用者から利用料を得る投資方法です。月極駐車場(月単位で貸す)とコインパーキング(時間単位で貸す)の種類があります。
土地活用でビジネスをするという側面から不動産経営色が強いです。駐車場以外にもコインランドリーやトランクルームなども似た分類になります。
民泊投資
民泊とは、旅行客などをマンション・戸建て等の一般住宅に宿泊させて、宿泊料を得る投資方法です。
訪日外国人観光客にとっては、ホテルよりも安い料金で宿泊できることから需要がありますし、Airbnb(エアビーアンドビー)の盛り上がりもあって、民泊は注目されています。一方で、まだまだ未知数な市場であること、行政への届け出が必要なこと等から簡単とは言えない投資です。
REIT(不動産投資信託)
REIT(リート)は不動産投資信託のことで、マンション、オフィスビルや商業施設などの投資用不動産に投資する不動産投資ファンドです。
REITを購入することで、不動産投資ファンドを通じて間接的に不動産に投資でき、運用による収益から分配金が得られます。REITには、証券取引所に上場しているETF(上場投資信託)もあるので、価格変動リスクはありますが、流動性が高い(売却しやすい)です。数万円など少額から投資できるので、現物の不動産よりもリスクが低いです。また、国内だけではなく、海外の不動産を対象にしているREITもあります。
投資信託の詳しい仕組みについては、「投資信託のやり方」もご参照ください。
以上が不動産投資の種類の大まかな分類ですが、対象物件が「新築」なのか「中古」なのかの違いもあったり、事務所や店舗として賃貸するパターンもあったりとその中身は多種多様です。
最近では、不動産投資クラウドファンディングというものもあり、REITとはまた違う形で、不動産の共同購入などの投資方法も出てきています。
不動産投資の仕組みは?どのように稼げるのか?
不動産投資で稼げる仕組みは、家賃収入(インカムゲイン)と物件の売却益(キャピタルゲイン)になります。
キャピタルゲインは、購入時と売却時の差額で利益を出すのですが、バブル時代のような不動産の値上がりは期待できず、限られたエリアや偶発的な条件(周辺環境の開発等)でしか旨味は享受できません。また、建物というのは購入した時点で資産価値が減少(減価償却といいます)してしまうという側面もあります。
なので、不動産投資ではインカムゲイン狙いが基本です。インカムゲインで稼ぐ場合に、大事なのは毎月のキャッシュフロー(お金の収支の流れ)です。大前提として、家賃収入から管理費・修繕費などの経費を差し引いて黒字にならないとやる意味がないです。そして、ほとんどの場合、初期費用をローンをして投資するので、ローン返済額(利息も含む)も計算に入れる必要があります。
不動産投資の仕組みをわかりやすく言うと、まず自己資金+ローンで物件を購入します。物件から家賃収入を得て、その家賃収入から諸経費を差し引いた上で、ローン返済をしていきます。ローンが完済したら、家賃収入ー諸経費=利益が全て運用益となり、不労所得を得られるという仕組みになります。
家賃収入が収益源になるので、第一に借り手=入居者を確保すること、そして賃料を維持することが大事です。一方、コストとなるローン金額を抑えること、管理費・修繕費等の諸経費についても目を光らせるべきといえます。
世の中的には「他人のお金で不動産が持てる!」という謳い文句でポジティブに訴求されていますが、自己資金での頭金を減らして借金の比率を増やすということは…それだけコストも膨らむことになりますので注意が必要です。
不動産投資における利回りとは?利回りの計算方法
投資用不動産の利回りには、表面利回りと実質利回りがあります。
表面利回りは、物件購入価格に対する年間家賃収入の割合になります。計算としては、年間家賃収入÷物件購入価格×100になります。
例えば、2000万円で購入した物件を月12万円で貸す場合は、
- 144万円÷2000万円×100=7.2%
となります。
実質利回りは、物件購入価格に対する年間実質収入の割合になります。実質収入とは、家賃収入から管理費・修繕費・税金といった物件維持に必要となるコストを引いた金額です。計算としては、年間実質収入÷物件購入価格×100になります。
当たり前の話ですが、入居者がいなければ、家賃収入はゼロになります。その一方で、管理費等は固定費としてかかるので、実質的に利回りが下がることもありますし、利回りがマイナスになるケースもあり得ます。
不動産投資ローンのシミュレーションをしてみる
不動産投資ローンは、職業や年収、物件の収益見込みなどによって審査され、どれくらい借りられるのか、金利がどうなるのかが決まります。
今回は、あくまで一例としてシミュレーションをしてみます。最初の自己資金が500万円、ローン金額を1500万円、20年間でローン完済するプランでシミュレーションをしてみます。
物件購入価格:2000万円
自己資金:500万円
ローン金額:1500万円
月間家賃収入:8.4万円
年間家賃収入:100.8万円
ローン返済額:▲75万円
管理費・修繕費:▲16万円
家賃保証料:▲10万円
年間費用合計:▲101万円
この例の場合、年間の実質利回りは、74.8万円÷2000万円×100=3.74%となります。
20年間は、毎年2000円赤字になるのですが、20年後にはローンを完済しているので、将来的には年間74.8万円のインカムゲインを不労所得でゲットてきます。
※計算を簡素化するために、節税効果や保険料支払分は除いています。
不動産投資のメリット、デメリットとリスク
不動産としての魅力となるメリット面、「怖い」「やめとけ」「割に合わない」と言われる所以のデメリット面・失敗する可能性のリスクについてお伝えします。
不動産投資のメリット
・安定的な資産運用ができる
入居者がいれば毎月安定して家賃収入を得られるので、株式投資のようにマーケット(価格変動)チェックが必要ない。管理会社と契約すれば、賃貸契約から家賃回収、修繕、退去手続き、入居者募集など不動産経営に関することを外注委託できるので、手間や労力もあまり必要ない。
・ローン活用によるレバレッジ効果
投資の基本は自己資金であるが、不動産投資はローンを活用できるので、自己資金以上の投資(レバレッジ)が可能。家賃収入によってローン完済したら、物件は自己所有のものになる。
・節税効果がある
減価償却により、節税ができる。とりわけ、不動産投資スタート時は減価償却費が大きいので節税効果が高い。
・相続対策になる
不動産は相続税の計算における評価額が、現金や有価証券よりも減額されるので、相続税の節税につながる。
・生命保険や死亡保険の代用になる
不動産投資ローンの返済期間中に、本人が死亡した場合などは、ローンの残高がゼロになる。残された家族は、不動産を所有し続けて家賃収入を得たり、売却して売却益を保険金として得ることができる。 ※団体信用生命保険に加入しておく必要がある
・インフレに対してリスクヘッジができる
インフレで現金価値が下がった場合でも、現物資産のマンションは物価価格といっしょにスライドするので目減りしない。要するに、物価変動に強い。
不動産投資のデメリット&リスク
・高額な初期費用が必要
不動産投資は初期投資額が大きく、ローンを受ける場合でも、金融機関や個人の状況によるが、最初に100万円程度の資金が必要になるケースが基本である。
・固定コストがある
維持管理コストである管理費・修繕積立金のコストが定常的にかかる。不動産を保有している間は毎年固定資産税があり、ローンを受けている場合は借入金返済・利息支払もある。管理会社に支払う業務委託費も固定費として必要。
・空室リスク
物件を購入しても、入居者がいなければ家賃収入は得られず、ワンルームの場合では空室時の収入がゼロになる。定常的な固定費がかかる分、家賃収入がゼロになると赤字が膨らみ続けることになる。
・価格下落リスク
購入時よりも不動産価格が下落するリスクがある。マンションやアパートは、経年劣化し、資産価値が下がる。株式や投資信託など有価証券であれば、どれだけ時間が経過しても老朽化することはないが、不動産は現物資産なので、築年数が古くなるほど価値が減少してしまう。
・流動性リスク
売却したくても、買い手がいないと売れないので、流動性リスクがある。ワンルームは比較的流動性が高いが、一棟や戸建ての流動性は低く、物件の状態やエリアによっては買い手が中々現れないことがある。
・金利リスク
不動産投資ローンを組んでいる場合、固定金利であれば返済期間を通して金利は一定だが、変動金利なら金利が上昇することによって返済額が増加し、負担が大きくなる可能性がある。
・災害リスク
地震や台風、火事などで物件がダメージを受けるリスク。建物が古くなると自然災害で倒壊する恐れもあり、木造建築の場合は、火事の被害が大きくなる可能性もある。
・業者リスク
信用できる不動産仲介会社や不動産管理会社を選ばないと、不利な条件を押し付けられたり、最悪の場合は詐欺まがいの被害に合うこともある。悪質業者は、不動産投資をするサラリーマンを「カモ」と呼んでいることもあり、怪しい業者や危なそうな業者、勧誘がしつこい&すぐに契約させようとする業者とは一切付き合わない方が良い。
不動産投資をはじめるには?やり方は?
不動産投資をはじめるには、物件を探して、決めて、購入するということになるのですが、実際には、それをいきなり自分でやるのは難しいですし、購入した後の物件運用は管理会社に外注委託することになるので、プロである不動産業者に相談するのがベターなやり方です。
初心者が少額でリスクなくはじめるのにおすすめなのは、REIT(不動産投資信託)です。REITなら手軽に1万円程からはじめられますし、投資信託なので、証券口座を開設したら、はじめることができます。
不動産投資セミナーや個別面談会に参加するやり方もあります。不動産投資に詳しい専門家から直接説明してもらえるので、不動産投資はじめるための具体的なフォローをしてくれます。一方で、強引に拘束して、その場で契約を迫ってくるような悪質な不動産業者もいるので、怪しい業者や危ない業者のものには参加しないようにしましょう。
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次回は、生命保険を資産運用と考えお金を増やす方法について説明します。